あきネット

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「新入生は毎年入ってくる」とGreg KH (Linux 4.19 リリース)

Linus Torvalds は気に食わないことがあるとしばしば怒って、メーリングリスト内で罵倒するということを起こしてきました。
そのたびに、罵倒されたほうがおそれをなすのはもちろんのこと、メーリングリストを読んでいる人のなかにも震え上がる人もいました。
一方で、「またやっているよ」くらいにわらっている人もいるわけではありますが。


Torvalds は、下手なコードに対してもですが、ソースコードが長くなったり性能が落ちたりすることに関して、過剰なくらい敏感です。
そのたびに怒り喧嘩腰のやりとりになり、耐えられなくて居なくなってしまう人もいままで何人もありました。


ところが、重要な会議を忘れてプライベートをダブルブッキングしてしまい、会議のほうの開催地を変更するという失態をやらかしてしまって、いよいよ非難を受け、
4.19 の制作期間中に休暇(実質的には謹慎)になりました。


代わりに 4.19 を担当したのは、いつもはリリース後のバージョンを担当している Greg Kroah-Hartman です。


彼はまた、Linux カーネルコミュニティでは新人を指導してきました。


その 4.19 が先日完成しました。



I've been giving my "How the kernel is developed" talk all around the

world for over a decade now. After the first year or so, I was amazed

that it kept needing to be given as surely everyone knew how we did this

type of thing, right? But my wife, someone much smarter than I, then

told me, "Every year there is a new kindergarten class."


日本では、幼稚園に通ったことのない人も多いでしょうが、小学校に通って卒業した人はほとんどでしょう。
新1年生がいるかぎり、毎年、新学級があります。


人は死にますから、世代交代は必ずあります。
生まれてこなくならないかぎり、常に新世代があって、新人があって、若者があって、初心者があります。


その初心者に対して「こんなこともわからないのか!」って罵倒する上司、誰もがその上司におもねる、そうして「恐怖政治」が布かれる社会というのはどうなのでしょうか。


そしてそうなると、能力を高めるというよりもむしろ、
イジメ、ハラスメント、吊上げで、居られなくなったりします。
組織の憂さ晴らしにさんざん利用されたあげくに、追い出されてしまいます。


そうした現象は日本でも日常茶飯事ですが、Linux カーネルの共同体にもいくらか起こっていたということです。
そして、そうしてわざわざイジメ、ハラスメント、虐待をしておきながら、「これがオレ流」と居直るというところが少なくありません。自浄作用がないのです。
それで結局は、その組織は新陳代謝がなくなり腐敗し、人は劣化していきます。



毎年毎回、ジェンガか石積みみたいに同じように、初心者を指導し続けるのは、途方もなくて、
「俺はそんな暇ないんだ」と思っている人もいるでしょう。
しかし、そうして指導しなければ、次世代は育たないのです。




初心者がいつまでも初心者で、幼いまんまで、その幼いまんまの人々を利用するという社会システムを、拝金資本主義のポピュリズム社会は続けてきました。わざとですよね。


例えば Windows や iPhone にせよ、中身がわからないですよね。
それで、初心者は「教科書」を見よう見まねで「コピペ」して、いつまでも成長しない。
けれど、それで、商品が売れる、書籍が売れる。
結果さえよければいい人はどうしてもいますけれど、わざと成長させないようにして「カモ」にしつづけることで稼いでいる社会があるのです。


「コピペ」ですから、「劣化コピー」になります。
社会も、成長せず、退化していくのです。
社会構造と、カネのために、人がバカになっていくのです。


世代交代が続くからには、初心者はいなくなりません。
しかし、脱初心者がなければ、初心者は増える一方でしょう。


ほとんど誰しも幼い頃はあるでしょうが、そこから大人にならないまんま、幼稚なまま、ということですね。



Linus Torvalds はプログラマの技能としてはともかく、
人格としてはまだ幼いまんまで、長になってしまった、というところがあったのでしょう。


Greg KH のほうが人格者で、なんだか、人がついてくる指導力が高いように思えます。



Linux はもう、 Torvalds の私物でもなければ、既存の制作者のものでもなくて、
全世界で多数の人々が使っています。
Android にも入っていますし。
実際にもう、Linux は全世界の人々のものなのです。
そして、制作にも門戸は開かれていて、開かれていなければならず、そして常に新人が入ってきます。
新人を事実上追い払って、気に食う奴だけ選別して残すようでは、この構造は破綻してしまうでしょう。


そのあたりの直観力と論理性が、 Greg KH にはよく備わっているようですね。